お笑い人狼草紙

「月光クロイツ」 クリムゾンコミックス刊 羽崎やすみ 作

話は、月臣源(つきおみ げん)が昔、自分の家で家政婦をやってた庚の電話を受けたことから始まる。変質者に付きまとわれている、雇い主のお嬢さんのボディーガードをしてくれ、と。
源は、人の姿のまま、狼人間の力を使う狼男の上位種、人狼(ひとおおかみ)で、小さいころ、満月の晩にビルの屋上を、ひとっとびしたところを庚に見られて、写真までとられてしまっていたので、それをネタにされ、しぶしぶ、久瀬光(くぜ ひかり)のボディーガードをすることになった源は、その騒動の結果、光も人狼(ひとおおかみ)だということを知り、なし崩し的に関わることになるのだが・・?

ガンダムwのパロディマンガを書いていた羽崎やすみさんの狼男もので、「風のたてがみ」
という少女漫画で出てきた、人の姿のまま、狼の力を行使する人狼(ひとおおかみ)の設定を使った作品。

作中では、源と光のほかにも、人狼のクロード・ルビエや、人狼の力を狙う秘密結社狼団(ひみつけっしゃおおかみだん)や、その背後にいるルーカンパニー、そして、継母の万平美園(よろずだいらみその) そのだんなで、女癖の悪い、源の実の父親の月臣正(つきおみただし) 半分、血のつながった弟で、ブラコンの沙月、御園の秘書で、忠誠心は篤いが、思い込んだら、妙な方向へ突っ走りまくる狼男の川岸、庚の孫で、女装趣味の史野、といった顔ぶれで話は展開する。

そして、光は、満月の晩に、銀髪の姿に変身するタイプの人狼で、源の母親の形見のクロス(十字架)で、月の満ち欠けに関係なく変身できるようになるのだが、実はクロードも、同じタイプの人狼だったことが、判明して、事態は急展開を告げる。

しかし、3巻の最初に収録されている、このエピソードを書いたところで、03年春に、コミッククリムゾンは休刊となり、実質、8割がた、書き下ろしの第三巻は、それから一年ほど待たねばならなかった。しかも、最初は、03念年末に発売される予定であったが、それも延期になり、04年春にようやく発売されたのであった・・・・・。

書き下ろしの三巻では、狼人間の力を抑えきれなくなっていく、クロードを何とかしようとする過程を軸に、美園と、その親友だった、源の母親、小夜子の過去が語られる。

御園と、正は婚約者で、小夜子が、正とくっつく形になったのだが、御園は、正のことは、兄弟以上の感情は持っていなくて、むしろ、二人のことを応援していた形だったのだ。

しかし、一人取り残された形になった御園は、それを紛らわすために荒れてしまい、それを何とかしようとして、満月の晩に、ドライブについてきた小夜子は、事故で、しかも、御園を助ける形で亡くなってしまい、満月の晩だったこともあり、自分が助からなければ、小夜子は死なずに済んだのではないか? と思わずにはいられなかった御園は、人狼について調べ始める。事情を知っているものとしては、当然といえば当然の行動であった、その結果が、狼団という秘密結社に結びつかなければ(笑)

人狼とはいえ、ベースは人間なのだから、その力があって、目の前で友達が死にそうになっていれば、手を差し伸べるのは、当たり前だろう。それに、小夜子だけが助かっていたとしたら、今度は、小夜子が、残された人生を、後悔したままで生きていたような気がするのだ。
強い力があっても、大事な友達一人救えない力など、あっても邪魔なだけに過ぎない、そう思っても、おかしくはないだろう。

そんな意味合いの言葉を口にして、「だからもう気にしないでくれ」と源は、御園を説得し、
長年のわだかまりは幕を閉じ、御園はルーカンパニー、ひいては狼団を解散することを決意する。

だが、クロードの問題はまだ解決しておらず、月の狂気に駆られて、クロードは光に牙を向けてしまう。

10倍返しにされて、病院送りになったのはともかくとして

核戦争の脅威を特集した番組を見て、美園が勢いで注文してしまった核シェルターに、クロードを、暴れても大丈夫なように隔離しても、時間稼ぎにしかならない。

源は史野をつれて、クロードの故郷へ、光は庚の実家に手がかりを求めようとする。

事件がおきたのは、そんなときであった。ルーカンパニー解散に納得しきれない川岸は、こっそりと、人を狼男、狼女にする薬の試飲会を開くが、おりしも、満月でハイになりすぎた狼男達は、町へ出て暴れようとし、結果、クロードを引っ張り出さざるをえず、更には、応援&クロードを制止にきた光までもが、人狼のアイテムをいくつもつけていたために暴走してしまう。

やることなすこと、ド派手というか、大味な美園が用意したヘリで、駆けつけた源も、光を相手に戦わうことを迫られるが、

光とクロードは、狼の要素を強く受け継き、動体視力に長けた狼系で、源は制御に長けた巫女系の人狼。一長一短はあるものの、両者が戦うと、後者が振りにならざるを得ず、追い詰められていく、源。

だが奇跡は起こり、光の暴走を止め、クロードももとに戻って、故郷に帰り、全ては丸く収まっり、源は、しばらくの間、母親の形見のクロスを、史野に預けて、物語は終わる。

私個人は、獣人フェチではなく、羽崎さんのお馬鹿で濃い芸風が好きだったので、読んでいたのだが、どうも、この作品、獣人に変身しないという点が大きくマイナスに働いていたらしい。
動物の姿に変わる、もしくは、萌えな猫耳姿になるのが、この手の作品を愛好するものの、つぼみたいなのだが、人の姿のままなので、強い存在に変わるという願望は満たせず、一般的な狼男は雑魚扱い、という点がお気に召さないのだと思う。
しかし、人の姿のまま、狼の力を行使する、というのは、使いようによっては、正体を隠して、人間社会に溶け込むことを要求される獣人ものの物語として、成り立つ余地を十分満たしているので、そんなに悪い素材とも思えないのだが、世間はそうは思ってはくれないようだ。

ちなみに、羽崎さんは、コミッククリムゾンでは、「月光^」の前に、「奇跡でGO!」という魔女の孫に生まれた、双子の少年の話を書いており、この二人、祖母に、後継ぎになることを強要される話なのだが、もし、クリムゾンが休刊にならなかったら、今度は、吸血鬼ものか、忍者者か、霊能者物でも書いていたのか、非常に気になる。実現することはないのはわかっているのだが。

ちなみに、現在は、羽崎さん、まんがタイム系列の雑誌で、OLもののギャグ4コマを書いているので、機会があれば、紹介する予定だ。
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by kwanp | 2004-12-31 12:34 | コミックス
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