いつもと同じ、けど、少し違う歴史

「プラネットラダー」 コミッククリムゾン刊 なるしまゆり 作

月光クロイツと同じ雑誌で、創刊時から連載されていた、人気漫画家なるしまゆりさんの作品で、これまた、月光クロイツと同じように、一巻丸ごとかきおろしという仕様で、5月ごろに、最終間が出て、完結している。
無数に存在するパラレルワールドの中で、人が存在する9つの世界。そして、その世界は、遠くないうちに衝突して、滅亡する。そして、それを回避できるのは、まなないの娘と呼ばれる少女に選ばれた、ひとつの世界だけ。

そんないいつたえをたよりに、あなないの娘と呼ばれる少女、カグヤを巡って、いくつもの世界をまたにかけ、そして生きている武器を操る、不老不死の者たちが争いあう。
かつては滅びを回避するために、皆が生き残れるために、手を取り合った者たちが、敵味方に分かれて、合い争う。その中でも、最大の力を持つ七界(ゲオ)とその皇帝クラは、穴内の娘を手に入れて、七界が生き残るために、六界と八界を、傘下におさめた地心火炎晶(ジオパイロゲート)の使い手、バンビに滅ぼさせ、あなないの娘を手にするのは、自分と七界だといわんばかりに、覇道を突き進む。

そんななかで、カグヤは、かつて滅亡した世界の王子で、現在は、かつての友の姿をしたロボットをはべらせた男、狂王子とよばれる男セーウと係わり合い、さらには、同じ歴史を何度も繰り返している賢者メシエと知り合い、一人でも多くの人間が生き残れる道を探そうとする。

が、そんなカグヤを、クラが見逃すはずはなく、彼女は、七界に連行され、クラと直接対決する羽目になる。

そして、皇帝クラとの対決の中で、カグヤは自分はあなないの娘ではなく、一人の無力な小娘にすぎず、あなないの娘というのも存在しないことを看破する。

それはカグヤの兄と、メシエが作り出した偽りの希望、滅び行く世界に希望を与え、絶望の世を照らす一条の光にしようとしたはかりごとに過ぎなかった。希望なしで、生きていけるほど、人は強くないからだ。

そして、クラはそれを更に利用して、世界を纏め上げ、滅亡を回避しようとして、どんな手段をも、選んで、実行してきたのである・・・・・・。

やり方は違えど、それはすべて、今日と同じ、しかし、少し違う明日を迎えるために、彼らは、滅びを回避しようと、己の道を歩く。

そして、その結果、全ての生きる武器の所有者が一同に会し、滅びを免れるかもしれない大博打に挑もうとするが・・・・・、

と、最終巻のあらすじをかいつまんで説明しましたが、これでも、全てを語っているとは思えないので、興味を持った人は、一回読んでみてください。その価値はある作品です。

滅亡にさらされながらも、それでも、明日を迎えるために生きる人たちの物語。この手の物語によくありがちな、なげやり感というのもは全くなく、最後の最後の最後の瞬間まで、生きることをあきらめずに、自分たちの生きる世界を守ろうとする姿は、人の強さとか、たくましさとか、やさしさを見た気がします。
結局、詳しくは語りませんが、万事、丸く収まる、とまではいきませんでしたが、それでも何とか生き延びて、今を生きている、というところで、物語は終わり、カグヤの兄、カガミの手紙で幕を閉じます。
自分の妹がいてくれたからこそ、自分はこうして、世界が衝突する未来を変えるために、その力を手にして、戦っていられると。偽りの希望として作られた伝説であったが、彼にとっては紛れもない事実だったのだと。
全てが終わった後、と全てが始まる前と二つのときを重ね合わせて、そこに希望がある、それを指し示したところで、全七巻、六年に及ぶ物語は、本当に終わりを告げます。

なるしま作品は、いくつかあって、完結している作品は少ないわけですが、どれだけ、過酷な状況に叩き落されても、なにかしらに希望を見出し、強く、優しく、傷ついた人間が、己の足で立ち上がり、道を行くのを、最後まで、温かく見守る、どんな状況でも、人には、人を思いやる優しさがあるのだと、そんなところがあるから、この人の作品は好きなのかもしれません。
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by kwanp | 2004-12-31 15:19 | コミックス
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