ゆっくりと、器の中が満たされて・・・

「水と器」 新書館 ウイングス 山田睦月 作

霊力はからっきしだが、人の世話をやくのは向いている、生臭坊主と、人形を作る技術は一流だが、心が欠けているために、妖かしに魅入られやすい人形ばかり作ってしまう、人形師を書いた時代物。

名うての人形師の養子だった彼は、生臭坊主と知り合い、彼に頼まれて人形を作って、それを供養していくうちに、少しずつ、人形師として、人として大切な何かをみにつけていくのであるが、そんな時、生臭坊主が、長年追っていた鬼が、見つかり、彼は姿を消す。

その前夜、坊主が人形師の家にやってきて、作ってほしい人形があると、頼みに来るのであるが、本人もわからないまま、人形師はそれを断り、坊主は、いつもと違って、拍子抜けするほど、あっさりと引き下がって、旅に出てしまう。

そして、作中のところどころで語られる、坊主の過去。坊主の過去は、零落した家柄の武士であり、坊主が追っていた鬼は、彼の実の兄だったのである・・・・・。

そして、彼は、兄と決着をつけるために、全てに幕を引く覚悟で、兄と対峙するが・・・


といった感じの話で、空っぽの器に、少しずつ液体が満たされていって、それがいっぱいになっていくような過程で、物語は進行していく。ふつうなら、坊主も人形師も、主役ではなく、惨めなまま、終わっていく敵役になりそうなキャラクターだと思うが、それを主役として、登場させ、かけていたつきが、まん丸になるかのごとく、ゆっくりと、成長していく、という過程は、派手さはないが、静かに、それでいて、何もかも、受け止めて、昇華するような懐の大きさのようなものを感じる。
最初から完璧な人間など、どこにもおらず、間違ったり、回り道をしながら、自分の足で、手で、大事なものを見つけて、人は成長していくのだ、ということを、人形師の人形の果たす役割の変化とともに、しっかりと書かれた作品で、坊主の、兄や過去を決着をつけるくだりと、その後のシーンは、この作者の作品を知るものなら、時代物の体裁はとっているが、この作者らしいと、納得せずにはいられない終わり方である・・・。
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by kwanp | 2004-12-31 16:55 | コミックス
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