結局は、似たもの姉妹なんじゃ・・・

学園内のカフェテリアの一角、

「えっ、今日、お弁当がいる日だったのか?」
すっかり失念していたという顔で聞き返すナギ。
「ええっ、午後から、特別授業だから」
学校でも和服を通している伊澄が、ナギのそんな反応にも慣れきったという口調で説明する。
「あー、そうなんだ、しまったな」
言葉とは裏腹に、さほど、慌てていない口ぶりのナギ。普通の学校、それも、育ち盛りの子供なら、一大事であるが、ここは普通の学校ではない。
「ハヤテ様などに持ってきてもらうというというのは・・・・」
「ん~、まあ、別にいいよ。このカフェテリアで、サンドイッチでも食べれば、十分に」
伊澄の提案にも、さして、乗り気ではないナギ。まあ、お腹がすいていないので、ある意味、当然の反応ではある。そんなやり取りをナギたちがしていると、
「ねーねー、聞きました? 校内に黒服の不審者が入ったんですって」
「まあ、恐ろしい」
「何でも、随分、貧相な顔の不審者で、今、桂先生が必死で追いかけているって・・・」
「早く捕まるとよいですねー」
通りすがりの女子生徒が、実感のなさそうな口ぶりで、先ほど耳にした噂を話しているのが、ナギたちの耳に飛び込んでくる。
「黒服の不審者ですか・・・・」
「・・・・・・・・・・」
伊澄がポツリと呟き、ナギの頭には、これ以上、ないほどの心当たりが思い浮かぶ。
(黒服の不審者って、まさか、ハヤテ・・・・・・・・か?)
半ば、確信をこめて、ナギが心の中で呟いた。まあ、貧相な執事なら、数は少ないだろうが、他にもいるだろうが、こういう騒ぎになるような執事は、そうそういないはずだ。
(ハヤテだったら、先生に見つかって、怒られるのも忍びないし、ここは私が・・・・。とりあえず、不本意だが、ヒナギクにも協力してもらって・・・・・・)
まさか、怒られるというレベルを、とっくに通り越した事態になっているとは思っていないナギが、大事にならないよう段取りを、大まかに考え付くと、
「伊澄、私、ちょっと行って来る」
「えっ」
黒服の不審者の招待に見当がついていない伊澄に声をかけて、席を立つナギ。

一方、

(なるほどねー。小・中・高が一緒だから、こんなに年齢に幅のある人達がいっぱいいるのか)
茂みに姿を隠して、敷地内を移動しながら、おおまかな学校の内情を把握したハヤテ。
(さて、この中から、どうやって、お嬢様を見つけるか・・・。とりあえず、事務室にでも行って、来客ということを証明するか? でも、事務室ってどこなんだろう?)
茂みから、顔をのぞかせ、このあとの算段を考えるが、通りすがりの人間にも丸わかりなので、目立つことこの上なかった。

その黒服の不審者はちょっとしたソリッドスネーク気分だったという・・・・。


                          
               ハヤテのごとく!!

この澄みきった青空に物思う第35話 「バカもケムリも猫も高いところに登りたいわけじゃない



「授業が始まると、さすがにこのあたりに人気がなくなりますねー」
人気がいなくなったのを確認して、茂みから姿を現すハヤテ。
「これで、ようやく落ち着いて、事務所を捜せます。っていうか、そもそも、逃げる必要なんか、ないんですよ。別に本当に不審者じゃないんですし」
人がいなくなって、ようやく、冷静になったハヤテは、逃げ隠れする必要がどこにもなかったことにようやく気がつくのであったが、傍目から見たら、ばればれな隠れ方は、実際はどう荒れ、不審者そのものにしか見えないことに、彼本人は、全く気がついてはいなかった。そして、その不審者同然のオトコを、どこからともなく、見ている二つの瞳があった・・・。
「借金取りに、追われていた頃の癖で、追いかけられると、思わず逃げちゃいましたけど、堂々としていればいいんです、堂々と!!」
己にいい聞かせるかのように、己の行動の正当性を口にする。長年の習性というものは、そう簡単に抜けないもののようだ。
「だって僕は、三千院家の執事なんですから!!」
「!!」
自己暗示のように、声を大にして、自分の素性を口にする不審人物の言葉に、彼の行動を見ていた人物は、聞き覚えのある名前に声にならない驚きの反応を見せた。
「それにしても、やっぱ、あの時計塔はすごいな~」
そこまで言って、気分が落ち着いたのか、学校内で、ひときわ目立つ時計塔を見上げるハヤテ。
「せっかくきたんだから、一度くらいは一番上まで上ってみたいな~」
田舎モノのおのぼりさんみたいなセリフを、ハヤテが能天気に口にしていると、
「ダメよ。時計等の一番上は生徒会のメンバーしか入ることを許されないんだから」
と釘を刺すようなセリフがどこからともなく聞こえてくる。
「えっ!? えっ!? だ・・・・、誰ですか!? それに・・・、どこから!?」
あわてて、あたりを見回し、声の主を捜すハヤテ。
「クスッ・・・・(ハート)、ここよ、コ・コ(ハート)」
からかうような声が背後から聞こえてきて、慌てて、後ろを振り向くハヤテ。
「まったく、三千院家の執事君が・・・・・、こんなところで何をしているのかしら?」
「!!」
声のする方向を見ると、そこにいたのは、木にしがみついていた学校の女生徒らしき、亜麻色の肩あたりまでのロングヘアをした少女の姿だった・・・・。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「えっと、あなたこそ、そんなところで何を?」
しばし、無言でみつめあったのち、あっけにとられたハヤテが、少女に問い掛けた。
「!! さ、さすがは三千院家の執事、いきなり、核心を突いてくるわね」
負け惜しみのようなセリフを口にする少女。誰が見ても、そういう言葉が出てきそうなものだと思うが・・・・。
「白皇学院では、最近、木登りが流行っているのですか?」
念のため、失礼のないように質問するハヤテ。
「これが遊んでいるように見えるかしら?」
どこに目をつけている、といわんばかりの口調で言い返す少女。もっとも、何も知らない人間が見たら、そう見えるのが普通だと思うが。
「でも、危ないですよ」
「そんな事、いわれなくても、わかっているわよ!!」
ハヤテの忠告に、声を荒げる少女。
「こ、これは要するに、えーとえーと、木って意外とすべりにくいし、枝もあるから、するする登れちゃうんだけど、上ばかり見ていると、、下がおろそかになるというか・・」
「平たく言うと、猫が高い所に登ったはいいけど、怖くなって、降りられなくなったみたいなものですね」
少女が必死で理論武装しようとしているのに、身も蓋もない指摘を声に出すハヤテ。
「ひ、平たく言わないでよ!! なんか、私、バカみたいじゃない!!」
ハヤテのセリフに、少女が怒りと恥ずかしさで、顔を真っ赤にして、食って掛かり、
「た・・!! 確かに、「バカと煙は高いところに登る」って言うけど、私、馬鹿じゃないですからね!!」
少女が、馬鹿じゃないということを強調して、念を押すが、傍から見れば、馬鹿にしか見えない。
(そこまで、言ってないのに・・・)
心の中で、少女に突っ込みを入れるハヤテ。
「と、ところで、あなた、最近、ナギの所に来た、噂の執事君よね? ものすごく頑丈で、ガンダムの生まれ変りと噂の・・・」
分が悪いので、別の話題を降って、話の矛先を変えようとする少女。
「ガ、えーと、まあ、噂がどうかはしりませんが」
ある意味、過小評価ともいえる噂にショックを受けつつも、少女の問いに答えるハヤテ。
「なら、その・・・、ちょっと、お願いがあるのですけど・・・・」
言いにくそうに、口を開く少女。
「はい? えっ・・・? なんでしょうか?」
きょとんとした顔で、少女がお願いを言うのを待つハヤテ。
「だから、その・・・・・、えっと・・、う・・・、受け止めてね」
はずかしそうに、そういうと、
「えっ?」
ハヤテが、その言葉の意味を理解するよりも前に、
「たあ!! えい!!」
木から飛び降りる少女。女の子なので、仕草もどことなく、かわいさを感じるのはご愛嬌だが、
「でぇ!!」
なにがなんだか、わからないうちに飛び降りられた方がたまったものでは
なく、
「え!! やっ!! えっ!!」
あわてて、受け止めようとするハヤテだが・・、
「ん?」
受け止めるよりも早く、少女の飛び蹴りが顔面に炸裂し、ノックアウトされるハヤテ。
「あ!! こ!! ごめん!!」
地面に倒れるハヤテが視界に入り、
「だ!!だ!! だ!! 大丈夫!?」
「え・・・ええっ、何とか・・・」
よろよろと立ち上がるハヤテに、あわてて、駆け寄りつつも、
「ダメじゃない。ちゃんと、受け止めないと危ないわ」
自分のことを棚に上げ、ハヤテを嗜める少女。
「危ないと思うなら、最初から飛ばないでください!!」
声を荒げて、少女に注意するハヤテ。こっちの意思を確認せずに、一方的に行動された上に、顔を蹴られたのでは、どれほど、温厚な相手でも、普通は怒るだろう。
「ム・・、ご・・、ごめんなさい。でも、そんなに怒鳴らなくたって・・・」
ハヤテの反応に、一瞬、怒りかけたものの、自分が悪かったという自覚はあったようで、しゅんとした顔で、謝りる少女。
「すごく怖くて、1秒でも早く、下に下りたかったんだもん。私、高所恐怖症だし」
バツが悪そうに、先ほどの行動をとった理由を説明する。
「ま・・・、まあ、いいですけど、でも、はしたないですよ? 女の子がスカートで、あんな高い所に登って」
事情を説明されて、怒りを抑えつつも、最近、身に突き出した小姑根性を発揮して、少女に小言を言うハヤテ。
「!? 別に平気よ? 下、スパッツだし」
「ーーーーーー!!」
平然とスカートを捲り上げ、スパッツを見せる少女に、声にならない叫びを上げて、驚くハヤテ。
「な、な、な、何を考えてるんですか!! お!! 女の子はもう少し、恥じらいってものを」
顔を真っ赤にして、ハヤテが少女に向かって叫んだ。
「え~~? 何、その純情ぶり。もしかして、三千院家の執事は、情緒が小学生並なんですか~~」
ハヤテの弱点を見つけて、形勢逆転と見たのか、鬼の首を取ったかのように、勝ち誇る少女。
「もぉ、人をからかって・・・、だいたい、高所恐怖症なら、そういってください。別にいきなり、飛ばなくても・・、言ってくれれば、助けに行きますよ」
顔を真っ赤にして照れながらも、少女を元気付ける言葉を口にするハヤテ。
「へえ、言ってくれれば、助けに来てくれるんだ」
ハヤテの言葉に感心するような声をあげる少女。
「? でも、、どうして、高いところが苦手なのに、あんなところに?」
少女の反応のわけが、さっぱりわからずにきょとんとしながらも、素朴な疑問を投げかける。
「しょうがないじゃない、あの子ったら・・・、巣から落ちて、泣いてたんですもの」
ぷいっと、そっぽを向きながら、少女は、木の上に視線を向ける。どうやら、素直じゃない性格のようだ。
「へっ? あっ、ヒナ鳥」
彼女の視線の先を見ると、先ほど、彼女が立っていたあたりの枝に、鳥の巣があって、ヒナがピーピー泣いているのが、目に入る。
「今時、そんな理由で、下りれもしない木に登ったんですか?」
「な!! 何よ!! また、馬鹿にする気!?」
ハヤテの言葉に、思わず、食って掛かる少女だが、
「いえ、とても感心しました」
満面の笑みで答えるハヤテ。そして、言い方が悪かったと思って、
「スミマセン、色々、失礼なこといってしまって・・・」
謝った。
「ん・・・、いや、わかればいいのよ」
ハヤテの言葉に、プライドをくすぐられたのか、少女も機嫌を良くする。
「でも、これで、あのヒナも安心ですね」
ホッと安心して、雛のほうを見ると、全然、安心ではなかった。なぜなら、雛を狙って、からすが枝に止まっていたからだ。

雛に、照準を合わせるカラス。

泣いて、許しを請う雛。

どこか、見覚えのあるシチュエーションに、目が点になるハヤテ。
「わー!! バカバカ!! なんなのよ、あのカラス!!」
「ピンチですよ!! 今、小さな命が風前の灯ですよ!!」
口々に、からすに向かって叫ぶハヤテと少女。しかし、叫ぶだけでは、どうにもならないのは、歴然とした事実であり、彼女らもそれをわかっているので、
「もー、バカカラス!! どっかいけー!!」
からすに向かって、石を投げようとする少女。
「だめですよ、そんなの投げちゃ、ヒナに当たっちゃいますよ!!」
慌てて、少女を制止するハヤテ。そのとき、
「ピーッ」
「あ、あれは!!」
巣に近づいてくる、二つの影。
「あれは、親鳥だわ!!」
「おおっ、美しい親子愛が、ヒナを救うのですね!!」
ヒナの両親を見て、口々に叫ぶ二人。しかし、

ギロッ!!

ピタッ!!

「ピーピー」

パタパタ・・・、

「ピーーーー!!」
「えーー、見捨てちゃうのーーーーー!?」
からすのひと睨みで、あっさりと、逃げ帰る親鳥たち。それにショックを受ける少女。
「だ・・!! ダメよ~~~!! ダメよそんなの!! お父さんやお母さんが・・、子供を見捨てるような真似をしちゃ!!」
涙目で、必死で親鳥に呼びかける少女。
「そんなのは、そんなのは絶対・・・、ダメなんだから・・・!!」
しかし、いくら叫んでも親鳥たちは帰ってこず、無常にも、カラスのくちばしは、雛鳥めがけて、振り下ろされる。
「だめぇ!! そんなのは絶対・・・・」
「どいてください」
少女の言葉を遮って、ハヤテが行動を起こす。
「えっ!?」
少女が、ハヤテのほうを振り返ると同時に、

ごっ!!

「・・・・・」
「・・・・・」
ヒナとカラスの間を、文字通り、目にもとまらない速さで何かが駆け抜けていった。
「・・・・えっ?」
突然のことに、何が起こったのか、理解できずに呆気にとられる少女。
「カラスさん、その辺で引いてもらえませんか? 出ないと次は・・、当てないといけなくなるので」
いつでも投げれるように、手で、石を弄くりながら、にこやかに警告の言葉を口にするハヤテ。
野性の本能で、その言葉が本気であることがわかったのか、すごすごと退散するカラス。
「よかったですね、ヒナが無事で」
何事もなかったかのような口ぶりで、少女に話し掛けるハヤテ。
「ていうか、私には投げるなって言っておいて・・・、自分は投げちゃうんだ」
ハヤテを非難がましく見る少女。しかし、ハヤテは平然と、
「僕はコントロールがいいので」
と自信たっぷりに言い切った。
「なっ、それはどういうことよ!! まるで私がノーコンみたいじゃない!! だいたい、あなた、さっきから・・・」
ハヤテの言い方にカチンと来た少女は、顔を真っ赤にして、先ほどまでのことも含めて、ここぞとばかりに食って掛かるが、
「ハヤテです」
「・・・・・・へ?」
唐突に、自分の名前を名乗った目の前の男の言葉に、勢いをそがれる少女。
「綾崎ハヤテです。あなたは?」
「・・・・・・わ・・、私は」
まんまとハヤテのペースに乗せられるのであった・・・・。

職員室・・、
「先生、あの、ヒナギク知りませんか?」
遠慮がちに、ドアをあけて、探している相手の居場所を尋ねるナギ。
「先生は今、モーレツに感動しています。まさか、三千院の方から、先生に話し掛けてくれるなんて」
「私、そんなに無愛想ですか?」
涙を流して喜ぶ教師を見て、自覚のない言葉を口にするナギ。まあ、自覚があったからといって、そう簡単に治るものでもないのだが・・・。
「で・・、ヒナギクはどこに?」
改めて、目的の人物の居所を教師に尋ねるナギ。
「薫先生、ヒナギクの居所って、知っていますか?」
「桂ですか、そういえば、さっきの授業、出てませんでしたね。大方、学校の治安を守るため、高いところに登って、下りられなくなってんじゃないですか?」
近くで、ガンプラを組み立てていて、バックパックのボリュームに不服そうな教師が、顔をあげて、見なかったと答えたてから、根拠のない憶測を口にして、それを聞いたナギが、
「そんな、猫じゃあるまいし・・」
学校でガンプラを組み立てていることも含めて、あきれた顔で、薫と呼ばれた教師を見るが、まさか、そのものズバリだとは、夢にも思わないだろう・・・・。
「まあ、姉の桂先生と違って、ヒナギクは優秀だから、そんなことないか」
冗談めかして笑い飛ばす薫。

「どこだー、どこいったー!!」
不審者(ハヤテ)を目の色変えて、探し続ける桂(姉)

同じ頃、
「へぇ、桂ヒナギクさんっていうのですか~~」
まさか、自分を追いかけている人物の妹だとは、かけらも思わずに、ヒナギクの名前をほめるハヤテ。
「あはっ、当然よ」
ぱっと見はしっかりしていそうだが、実質は大差なさそうな単純そうな性格の妹が、ハヤテの賞賛に、得意気に言った。
「じゃあ、お礼ついでに、時計塔の上に連れて行ってあげようか」
気をよくしたヒナギクは大盤振る舞いな発言をする。
「えっ!? でも、時計塔は生徒会の人しか入れないんじゃ・・・」
ヒナギクの太っ腹な発言に、かえって、ハヤテのほうが不安になるが、
「大丈夫よ。その生徒会の会長は、私だから(はあと)」
不敵な笑みを浮かべて、自分の素性を名乗るヒナギクであった・・・・。

                        TO BE CONTINUED
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by kwanp | 2005-06-15 09:12 | コミックス
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