彼らは、まだ、ただのバケモノでしかない

ヤック族の襲撃を受けて、倒れたリリフ。しかも、ヤック族は毒を使っていたようで、リリフの様態が急変したとのことですが、遅効性の毒なのか? キノコ類の毒でも使ったか、あるいは、遺跡の中に眠る知識を身につけたか、ヤック族にエルの兄が居るということなのかな?

リリフは、長老たちに、このままでいいのでしょうか、と問い掛ける。

アルトたちに対するリリフの態度で、一部で、アルト達を利用したとか言う批判があるわけだが、交渉というか、アルト達との会話が成立するまえに、リリフはヤック族の攻撃に倒れてしまったわけだし、そもそも、ミルキィがいて、交渉が成り立つのか?という疑問がありますし。パピル族と出会わなくても、ミルキィの性格だったら、ヤック族と戦いになった可能性は高いですしね。
なにしろ、今まで、アルト達の旅を手助けしてきた人間は、いずれも、年上、あるいは、彼らを手助けする余裕のある人間だったわけで、アルトやミルキィは、その先導で、旅を一応は続けてこれたわけです。
そうでなかったら、結局、アルトやミルキィは、暴れるだけ暴れて、町から町へ、追い立てられるように逃げていって、日々を過ごして、死神にナルどころではなくなっていくのが、関の山の日々を送っていたでしょうしね、主にミルキィのせいで。
ミルキィは憂い山で、アルトと一緒に旅をしなさいとは言われたが、彼と一緒に旅をすれば、嫌な思いをしなくて済むと思い込んでいるから、旅をしているところがあるのだし、どうして、自分がそういう思いをするのか、ということに関して、考えることをしていなくて、自分が正しい、悪いことは皆、他人のせいと疑いもせずに思い込んでいるところがありますからね。
そんな人間が、他人との交渉をやれるとは到底思えないですし、いいところ、他人の弱みに付け込んで、自分の目的を果たそうとするだけでしょう。アルトもパピル族の村で、ミルキィの滅んでしまえを止められなかった以上、野生の一部始終に手を出すな、は自分が何もしないことを正当化するための言い訳でしかないようで、それを考えると、ミルキィを止めるのは期待できないでしょうから。力のない人間から、自分の欲望を満たすために利用するのは、ミルキィの側になる危険性が非常に高いわけで、おそらくは、ヤヤナーナの遺跡に踏み入る人間の大部分と大差が無いことが露呈してしまうからでしょう。なにしろ、墓泥棒はいうまでもないけど、考古学者も、調査する対象に対して、畏敬の念とか、相手を尊重する態度がなければ、情報を盗んでいっているのと大差が無い部分があるわけでしょうから。ミルキィたちが、ただの墓泥棒と大差が無いことを証明してしまうからでしょう。
交渉になる前に、リリフを襲わせたのは、そういう危険性があるのだろうし、これは、ああいう場面でなくても、それは変らないし、それを止めたり、正したりできる人間もいない。
しかし、リリフやパピル族は、自分たちが生きるので精一杯の連中で、ヤック族のやることを、指をくわえてみることは、滅びを意味するしかないのだが、それでも、彼らは戦おうとしない。
彼らの民族的な特性を考えると、戦うように話を持っていくこと自体、至難の業なのは、前回の感想で述べたわけだが、一人で戦うだけならともかく、その上で、勝ちを収めるのはさらに難易度が上がるわけで、そこに通りがかったのが、自分は損をするのだけはいやなミルキィがいるアルト達三人だったわけだ。リリフの場合は、やり方がまずいこともあるのだろうけど、アルト達をよく見せるための補正の犠牲になった可能性が高い。
リブリでは、パン泥棒やっているし、ルウォールでは、結果的に水泳大会の妨害、リブリ~ルウォール、憂い山のときは、無賃乗車とレベルは別にして、犯罪行為やっているわけだけど、ヤヤナーナでは、遺跡に入っていって、しかも、パピル族とか、ヤック族が居なかったら、完全に墓泥棒でしかないですからね(トレジャーハントはそういう側面あるのだけどさ)。しかも、アルトやミルキィは、力は持っているけど、中身が伴わない典型的なタイプで、ただ、遺跡を探検するだけなら、墓泥棒と、精神的に大差がないことを露呈してしまう危険性が高いですからね。
そもそも、何かあったときには、力を持った人間を頼りにするけど、それが去ったら、そういう人間を邪魔者のように扱うのは、人間にも、そういう性分は存在するわけだし、仮面ライダーや、ウルトラマンが、戦いが終わったら去っていったり、戦隊ヒーローが、力を返上したりするのは、そういう理由も少なからず関係しているわけだし。極端な話、日本は特にヒーローを大事にする土壌が出来上がっていないわけで、同じチャンピオンの悪徒は、そのあたりを、派手なキャラを出したり、ソウルメイトとかいう仲間達に、主人公の陽虎を褒め称えさせることで、話をかいて、そのあたりをぼかしているか、避けている節があるし、マイティハートは、エロとかラブコメとかにベクトルを向けているわけだが、そのあたりのこと真っ向から書いたり、リアルに描けば描くほど、感情移入されにくいから、そういう形で受けをとろうという方向に走りがちなわけで。
結局のところ、リリフじゃなくても、ヒーローのそういう好意や使命感に縋るとか、好意を当てにするとか、そういう形で、守ってもらっている側面があることは変わりはない。リリフの件は、それを分かりやすく書いているだけで、彼のキャラだけが、ああいう行動をとるわけではないのだし。
昨今の特撮で、よく言われる勧善懲悪の否定というのも、つまるところは、正義やヒーローというのを、別の角度から見直すというよりも、自分だけが損をするのがいやという考えに他ならないから、己の欲望のためだけに戦うヒーローが幅を利かすことになるわけで。
まあ、この考え方も、個人主義というには、あまりに、一方的なものでしかないのだしね。

アルトは前述したように、何もしないことを、野生の一部始終二手を出すなという父親の言葉を理由にしているだけ出し(長老のいう死んでいない状態というのは、まんま、彼にも当てはまる)、ミルキィは、自分が損をしたくはないという人間で、それが力のアドバンテージを持っているだけで、リリフやパピル族に何かいえるような人間ではないのは明白だし、むしろ、精神的にヤック族よりでしかない。

だから、今回の戦闘で、ヤック族がミルキィたちのことをバケモノといったのは、ある意味、的を得ているというか、彼女は、甘っちょろい肩書きとか言ってたが、自らの欲望に突き動かされて力を振るうだけの彼女は、まさにバケモノでしかない。

おそらくは、死神になるのには、強力な力もそうだが、死は、どんな生き物にも平等に降りかかることを考えると、その力を考えなしに振るようなことは許されないで、命や世界の均衡を守るために、その力を振るうことのみが許されるのではないか、と、これまでの内容から推測できるわけだが。

そもそも、アルトの場合は、力をもちながら、パピル族と同じように、ただひたすらに、争いを避けていただけで、ヤック族を攻撃したのは、ヤック族に対する態度が、己と自分をいじめてきた人々を彷彿とさせるからだったというのが近いので、弱い相手を痛めつけて喜ぶのが許せないというようなものではないようだし。

そんな連中に、パピル族の態度をどうこう言う資格があるとは到底思えない。まあ、ヤヤナーナのエピソードではなくても、これは遅かれ早かれ、避けられない道ではあったわけだが。
無敵看板娘では、おかみさんの様に、歯止めになるキャラが居たわけだが、PUNISHERでは、常時、そういう役回りになりうるキャラは居ないし、ワンダーも、結局は見守るだけでしかないので、彼らのやっていることは、あまり成長はしないわけで。
そうやって、わざと間違った方向に進ませて、どん底まで叩き落す準備があり、そこから、アルト達を成長させるというのも、一つの手だと思うので、今のところは、保留している部分もあるのだろうけど。

まあ、ついでにいうなら、パピル族は、ある意味では、周囲の迫害から、ただいたずらに力を振るわないことで逃れようとしたアルトとも重なる部分もあるので、そういう自分達を変えようとしたリリフというのは、力は持っていないけど、ある意味、アルトよりも先をいっている部分もあるということを描きたかったが、それを迂闊に書くと、今のアルト達が力を持ったバケモノでしかないということを白日の下にさらしかねないからなあ。

それにパピル族のようなメンタリティの集団では、力のある無しは関係なく、リリフのように、守るために行動しようとする存在は、おそらくは戦いが終われば、異端というか、ヤック族と変らない目で見られ、排除されるのがオチなので(長老が決意したといっても、根本的な体質は、そう簡単に変らないだろうし、ヤック族の問題がどうにかなれば、その決意がどこまで持つのか怪しいものですから)、一族の元を去るか、死ぬか、と彼に残された選択肢は、多くはない。
それはヤック族に挑んでいって、倒れていったパピル族のものたちと同様でしょうし、彼らが一族を説得するための努力をしなかったモノばっかりだとは思えないし。

一族を助けれても、リリフの運命は、死ななくても、あまり、明るいものではなかったのは、容易に想像できますしね。

リリフの死を目の当たりにしたことで立ち上がるパピル族、それに手を貸そうとするワンダー?
ある意味では、この光景は、アルト達や世界が、もしかしたら、たどるであろう未来を暗示しているのかもしれませんね。
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by kwanp | 2008-10-02 11:15 | コミックス
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